PRODUCTION NOTE

  • いよいよクランクイン

    前日までの嵐のような準備と段取りを終えて、晴れ晴れと映画撮影初日を迎えた。
    6時半集合、なんとも言えない緊張感と興奮で移動車に乗り込み、名駅の名古屋プライムセントラルタワー会議室へ向かった。
    機材搬入、約40人の制作スタッフ入り。撮影場所となる大きな会議室の中央で、山田監督と撮影監督の西垣さんを中心に撮影段取り。撮影開始のイメージを膨らませ、各所に指示が飛ぶ。
    6時からヘアメイク準備を始めていた出演者たちも8時頃には現地入り。
    役者たちと挨拶を交わすメイク室は、まるで修学旅行のような陽気さ、雰囲気はバッチリ。
    最初に山田監督から挨拶、いよいよクランクイン。「用意、スタート!」
    こうしてスタッフ、出演者もワンチームとなって約9日間の撮影が始まった。
    主役陣の山内(秋田卓郎)、前田(岡陽介)、佐久間(兼平勝成)、加藤(安藤悟)
    のキャラも立っていて、繰り出す演技にまずはひと安心。
    この会議室で撮影したのは映画の冒頭、4人が映画制作の会議で始めて監督やプロデューサーなどと顔を合わせるシーンと、中盤の可那子(末永桜花 / SKE48)、須藤(三根孝彦/タックイン・よしもと)も参加する映画制作会議シーンの撮影を行った。
    撮影の香盤上、1箇所でいくつものシーンをまとめて撮影することが多いので、衣装やヘアメイクもその都度変更して行う。話の流れや時間経過もあるし、別日で撮影したシーンとこのシーンが繋がったり、編集後の仕上がりを想定して、前後の衣装やヘアメイクも繋がらないとNGなわけで、
    そこはヘアメイク部、衣装部としても非常に神経の使うところ。
    昼過ぎからは、亀島にある小さなレトロハウススタジオ。当時の丹下宅をイメージした、昭和レトロな和室。音楽ライターの別府さん全面協力のもと、当時のヘヴィ・メタルグッズにあふれていた。さらに、シーンごとに役者たちが着ているバンドTにも注目して欲しい。なかにはレアで高額なプレミアTシャツも登場するので、その辺りも映画を観る楽しみのひとつになるはず。
    ちょうど日が暮れた空の下、東区泉にあるサンデーフォーク駐車場ではバンドツアー移動中のシーンを再現。当時は車中泊当たり前、楽器や機材、グッズなどを積み込んだワンボックスにメンバーたち。その後は、レコード会社と電話をする伊藤政則氏を演じる須藤(三根孝彦)の当時のエピソードシーン。今回のオーディション時から、三根さんのことを山田監督が伊藤政則氏に似ていると絶賛していただけに上映後の反響が楽しみだ。かつらや衣装で本人さながら、迫真の演技でシュートを重ねた。
    こうして初日現場は終了。その後、伏見の制作会社アストロに監督と助監督、撮影部が集まりミーティング。翌日からの撮影段取りを再構築してこの日を終えた。

    助監督 北川克彦

  • 本当に“ALL 名古屋”で映画が作られたのです。

    2020年の4月頃、サンデーフォークの井上くんが事務所にやってきて「OUTRAGE」の映画を作る、そして関わって欲しいという話がことの始まりだった。
    自分はヘヴィ・メタル素人同然…「OUTRAGE」と聞いて恐れ多い…、正直躊躇した。
    その後、「OUTRAGE」のマネージャーでありこの映画のプロデューサーである小崎さん(ライブパワークリエイティブ)、山田監督(山田ホーム)と初めてお会いし、OUTRAGEの映画構想の話を聞いた。
    そして6月頃に新栄の山ちゃんで再会。映画製作の具体的な話となり、助監督を指名され、さらに全て名古屋制作でできないか?…と。
    アツいOUTRAGE話を聞いて、正面に座っていた山田監督の顔を見て迷わず「分かりました、やります、お任せください!」と乾杯した。
    “ALL名古屋 MADE IN 名古屋” か…アツい!
    店を出て夏の夜空を見上げながら、同席した中村カメラマンと叫んだ。胸が高鳴った。
    翌日から怒涛の準備が始まった、年内に撮影予定の強行スケジュール。
    山田監督と撮影監督の西垣さん以外は、全て名古屋スタッフ。
    本当に名古屋のスタッフだけで映画が撮れるのか?
    「いや…できるでしょ、やるしかない」
    助監督は、自分を合わせて4人。河合、井上、堀のアツい奴らが揃い、連日のように伏見にあるオフィスキタガワ、アストロランドを拠点に撮影準備が繰り広げられた。
    そうこうしているうちに映画タイトルが決まり、近藤さん(BBJDC)デザインによるロゴも決まり、成子さんの脚本も上がり、全体進行のサンデーフォークにて幾度も会議を重ね、11月には約70名の役者オーディションを行った。気持ちのいい秋空の下、監督と脚本や配役について意見交換をした。
    そして、秋田卓郎(サンミュージック)、岡陽介(巣山プロダクション)、兼平勝成(セントラルジャパン)、安藤悟(セントラルジャパン)の主役4人、メンバー役をはじめ14人の役者が決まった。
    1月16日に撮影本番を迎えた12月末、急ピッチに各所が準備の真っ只中、新型コロナウィルスの影響で余儀なく撮影延期の判断が下された。延期日程は未定…コロナ次第か…。事務所の窓から冷たい空を見つめた。夢中で走りづつけてきただけに一瞬光を失ったが、OUTRAGEが35年やり続けていることを考えたら、こんなこと屁でもないと気持ちを切り替えた。
    立春を過ぎた頃に、5月頃に延期していた撮影を行う方向になった。
    延期になったおかげで、スタッフみな奮起して準備再開。
    4月に入って役者稽古、5月にはOUTRAGEメンバーと主要スタッフとで大須観音にて映画祈願を行った。
    そして、満を持して5月26日ようやくクランクインを迎えた。
    プロデューサー朝倉役の近藤久美子(ジオット)が放った台詞、「ヘヴィ・メタルです。ヘビメタではなく」を聞いたとき、再び胸が高鳴った。いよいよ撮影が始まったと実感した。
    OUTRAGEのメンバー役になって「OUTRAGE THE MOVIE」という映画を作る話。
    メンバー役、プロデューサー役、映画監督役を中心に繰り広げられる青春群像劇だが、
    脚本を読み込むと、今の自分にも誰にでも当てはまるキーワードが隠されていることに気づく。
    現場で演じている役者の台詞が、自分に言われているようにも感じ、撮影現場と共に自分も成長し、忘れかけていた気持ちが蘇った。
    クランクアップして半年以上経つが、大勢のスタッフ一丸となり、ひとつの映画を作り上げたこと。とても有意義な時間だった、かけがえのない経験だったこと。 私、今もまだ映画撮影ロスになってます(笑)
    そして撮影に関しての現場備忘録的な日記は、この先アップしていきますのでよろしくお願いします。

    助監督 北川克彦